檸檬 / 梶井基次郎
表題の通り、今回紹介するのは梶井基次郎の短編集「檸檬」です(新潮社)
星新一のショート・ショート等、僕が短篇集を読むときには、一話読んだあとすぐに読み返すことが非常に多いので、非常に時間がかかります。
読む際はぜひとも、梶井基次郎の背景を頭に置いておくと、面白みが増すのではないか、と思います。
個人的なお気に入りの短編とおすすめポイントを軽く書いておこうと思います。
「路上」
文庫本で10ページ弱しかない「路上」は、心構えなどないままに、無意識に、崖を滑り落ちながら、『破滅というものへの一つの姿を見たような気がした』と書いてあり、その後のあたりを見回した際の寂寥感やぼんやりした気持ちをあわせた不自然な連鎖を描き出しています。
「Kの昇天」
月に魅入られ、『影とドッペルゲンゲル』に取り憑かれたK君、イカルスを題にした詩の一節を引用しながら、K君の死について、本人視点ではなく、本人の友人から別の知人への私信という形を取りながら考察していく1編で、題材が非常に良いと思いました。不治の病に冒されながら、何かに魅入られるということはどういうものなのか、非常に考えながら読んでいました。こういうの書いてみたいと思いました。
どれもこれも素晴らしい出来なのですが、紹介文を書いていくだけで、非常に時間が掛かりそうですので、一旦ここで置いておきます。
作品の傾向としては、『病』がテーマになっているものが非常に多く、それは梶井基次郎本人の『病』が関係しているのでしょう。しかし、ただただ病んでいるのではなく、病から治癒していく前向きな気持ちを描いた『ある心の風景』など、決して全編通して後ろ向きな気持ちでは無いように思いました。
梶井基次郎の檸檬、おすすめです。